よき夜を 2024.04.26 かまどのうえで

今日も一日、今週も一週間、お疲れさまでした。
大切な時間をお過ごしになられたことでしょう。
始まりますね、例のあの期間。
そう、あの、ゴールデンウィークです。
盆暮れにならんで民族大移動をまき起こす、あの期間です。
移動される方は、お疲れさまです＆存分にお楽しみを。
ゴールデンウィーク？なにそれ、おいしいの？の方は
変わらぬ日常を生きてまいりましょう。
わたくしも同じくです。

今日の絵は何だかよく判りませんですね。
先にご説明申し上げますと、山の猫男はパン焼きかまどの上にいます。
下に敷いているのは７枚の羊の毛皮です。
彼は誰とも話さず、ヒマワリの種だけを食べて、
７年間をかまどの上で過ごしているのです。

出典はこちらの本です。
「大力のワーニャ」
岩波少年文庫に入っています。
図書館へ行った時に、書架でこの本がふいと光りましたので、
「読めという事ですな」と借りて帰って読みました。
以前にも読んだことがあるお話です。
昔話がベースになっていて、それなりに知っているストーリーでもあります。
以下思いっきりネタバレを致します。

主人公のワーニャは、兄ふたりがせっせと働いている時にも、ごろごろしています。
日向で気持ちよくお昼寝をしていたりします。
兄たちは腹を立てていますが、父親と祖母？がワーニャの味方をするので、手が出せません。
あるとき、ワーニャは山の中で老人に出会います。
パン焼きかまどの上で七年間を過ごせ、その間は話をせず、ヒマワリの種だけを食べろ、
家の屋根を持ちあげられるようになったら、旅に出ろと教えられます。

ワーニャは言われた通りにして、誰にも何故こんな事をしているかを話さず
パン焼きかまどの上で、ヒマワリの種だけを食べて過ごします。
そうして七年目に屋根を持ちあげる事に成功して旅に出て、
もろもろあって、国の皇帝となります。

このストーリーに「え、ワーニャずるい」と思われるでしょうか。
私は「ワーニャすごいやん」と思います。
七年間も、誰とも話せず、自分がやっていることに理解を求める事も出来ず、
食べるものはヒマワリの種だけ、寝ることしか出来ない、お風呂にも入れない。
事情を知らない家族や村人からの攻撃もあります。
危なく家ごと焼かれそうになったりします。
それでも、かまどの上から降りないで七年間を過ごすのです。
誰とも知らない老人に言われただけで、それをやり遂げるのです。
尋常じゃない胆力。すごすぎです。
ワーニャは一見「怠け者」と読めるように描かれていますが
これのどこが「怠け者」でしょうか。

ワーニャは「怠け者」ではありません。めっちゃ真面目で真剣です。
自分を生きることに真剣で手を抜きません。
世間的な”勤勉”ではない方向に自分を全振りしているだけです。
一見とても羨ましい生き方ですが、リスクが山ほどあるのは物語からも判ること。
それも全て引き受けたうえで、自分を生ききって最後に”頂点”に到達します。
あっぱれとしか言いようがありません。

誰でもワーニャのように生きようと思えば生きられるのかもしれません。
「ごろごろ遊んでればいい思いが出来る」というお話ではなく
他がどうあろうとも自分の「こうなのだ」を自然に生きることなのでしょう。
”皇帝になる”のが目的ではありません。ゴールはそれぞれに違います。
肩の力を抜いてそれぞれに「わたし」な日々を生きられますよう。

どなたさまも、よき夜を、よき一週間を。

「鉛筆で描いた猫」展に出品した作品の一部と言葉で構成しました。
お楽しみ頂けましたら幸いです。

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カラー版は用紙がホワイトで絵が少しビビッドに感じられます。
各ページにカラーの枠があります。展示した時のマットの色に合わせてあります。
モノクロ版は用紙がクリーム色で落ち着いた雰囲気です。
枠はなく、シンプルな本です。
サイズはどちらもA5、46ページです。

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