よき夜を　2023.02.24　大きな深い愛

今日も一日、今週も一週間、お疲れさまでした。
大切な時間をお過ごしになられたことでしょう。
私のところでは火曜日に雪が降りました。
それなりに積り、一日ずっと降っていました。
窓の外をいつまでも見ていられて、時間がとけました。
静かな心もちになれたひと時でした。

今日の絵はお分かり頂けますでしょうか。
月曜日に訃報が伝えられた松本零士さんの数々の名作の中から
「銀河鉄道999」のメーテルに小梅のベンチへお越し頂きました。
メーテルを描くのは数十年ぶりです。
十代の頃に何度も描いた手が覚えていました。

月曜日の訃報を知り『銀河鉄道999』をどうしても読みたくなり、
ネットで探して、第一話を試し読みをさせて貰いました。
https://csbs.shogakukan.co.jp/book?book_group_id=1213
これまた数十年ぶりのことで、細部をすっかり忘れていたのに
絵はしっかりと覚えていました。
YouTubeでもTVアニメ版の第一話を視聴しました。
https://www.youtube.com/watch?v=d0iwi6sZ5LE
原作とアニメでは、重要な細部が違っています。ちょっと驚きました。
これでは前提が違ってしまうのに、このまま放送されていたのか…と
当時の制作現場でどんな事情があったのかと、そんなことも思いました。

松本零士さんがこの作品で最も伝えたかったことは
「命に限りがあるからこそ、人は真剣に生きる」
そういう事だったと私は受け取っています。
お金があって機械の体を手に入れて、永遠に生きられる身分になったら
人は命を粗末にするようになる。特に他者の命を。
1970年代の作品です。
その頃から松本零士氏は危機感を覚えていらっしゃったのだろうかと
昨今の風潮にどんな思いを抱いておられたのだろうかと
そんな事を思いながら、第一話を読みました。

社会的に弱い立場の人の命を、生きる意味のない命と嗤ってしまうのは
自分は機械の体を持っていると勘違いしてしまっているのでしょうか。
自らの心臓の鼓動に、気がつかないのでしょうか。
その鼓動が、自分が指さして嗤っているその相手と同じものだと
気がつかないのでしょうか。
気がつくことが出来なくなっているとしたら、何と情けなく残念なこと、
その命と体が悲しみ慟哭してはいないかと私は思ってしまいます。
彼に、彼らに、この作品を読んでほしい。
大きな深い愛を持って、私たちに大切な事を伝えて
私たちを生かそうとしてくれたこの作品を、読んでほしいと思います。

読んでいて、手が止まって嗚咽がもれた場面がありました。
62-63ページの見開きの絵です。999が宇宙に飛び立っていく場面です。
この絵をどれ程の大きな愛をもって描かれたのかが、数十年たってやっと、
衝撃のように伝わってきました。
私はこれほどの愛をもって創作に向かえているだろうか。
これほどの愛をもって毎日を生きているだろうか。
旅立った人に目を覚まさせて頂いた今週でした。

どなたさまも、よき夜を。

◆今週の人さまのお言葉◆
みんな生涯に一度、自分はどうするかという瞬間が来てるはずなんですよ。
その瞬間に自らの意思で旅立つかどうか、それで運命が変わる。
それぞれの旗のもとに、あなたの夢を果たしてほしい
松本零士
https://eiga.com/movie/78149/interview/

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