よき夜を 2024.08.23 夏の終い

今日も一日、今週も一週間、お疲れさまでした。
大切な時間をお過ごしになられたことでしょう
立秋を過ぎて、処暑となって、続いている猛暑な日々。
台風が日本列島めがけてやってくるとの予報もあり。
まことに無理ゲーな夏です。生き延びましょう。

残暑がずっと続いて、体にこたえる状況ですが
夏の盛りの頃とは、やはりどこか変わってきています。
蝉の声があまり聞こえなくなりました。
毎朝あれほどに賑やかだったのに。
ラジオの音もチャイムの音も聞こえないほどだったのに。
蝉たちの声に、さほどの圧を感じなくなりました。
夕方に植物への水まきに出ると、カネタタキの声が聞こえます。
これほど暑くても、夏が終いつつあるようです。

先週末から、道に落ちている生き物に遭遇することが増えました。
アスファルトの上に落ちているトンボや、じっとしているカマキリや
こちらを見据えてから、ちょろりと逃げていくカナヘビの赤ちゃんなど。
その綺麗な体を踏みつぶされてはもったいないと、手で拾い上げてみます。
命の残りが多く、生きる気満々の方は、すっとわたしの手を離れますが
命の終いに入っている方は、指にしがみつくばかりで、動こうとしません。
細く精巧な美しい脚が、わたしの指をしっかりとにぎる力は
まだ生きるのだ命が終わるまで生きるのだと語っているようです。

アスファルトの上で、靴の底やタイヤの底につぶされて終わるよりも
樹の上、草の上、土の上で、静かに終わってゆくほうが良いのではないかと
人間の勝手な思いで、近くにしかるべき場所を見つけて、
指からその場所へ移って頂き「よう頑張んさった」と称えて去ります。
命の終わりに立ち会わせてもらった、厳粛な気持ちで歩きます。
そして、自分はどう終わりたいかと考えます。

自然の中で生きる存在は、その時が来たらただ終わることが出来る。
まことに羨ましい限りです。人間は、そんなわけには行かない。
はなはだ面倒くさいことです。
わたしも出来れば、樹の上草の上土の上で、静かに終わってゆきたい。
そうなると関係各所に多大なご迷惑をおかけする事になってしまいますので
せめて病院のベッドで管につながれてではなく、自宅で静かに終いたい。
これも現状では、それなりにハードルが高い。
アーユルヴェーダで、静かな穏やかな終わりを迎えられるとの話を聞けば
インドへ行けば可能なのかしらなどと、妄想も膨らみます。

ひとしきり妄想を繰り広げて、我に返ります。そこじゃないと。
その時に至るまでの道のりをどう歩くかで、終い方もおのずと決まってゆくのだと。
生ききってその時を迎えるならば、どんな終い方でも同じだろうと。
そして、この夏の間にやっておきたかった諸々に、戻ってゆきます。
残して頂けている命と時間を、使い切りたく存じます。
夏が終いにむかいます。

どなたさまも、よき夜を、よき眠りを、よき一週間を。