よき夜を 2024.02.23 雨

今日も一日、今週も一週間、お疲れさまでした。
大切な時間をお過ごしになられたことでしょう。
ひたすら雨と曇りが続いた今週でした。
今日は雪になっている地域もあるとのこと。
お日さまの光が恋しいです。洗濯物を外に干したいです。
明日は晴れるでしょうか、曇りでしょうか。

雨の朝が続いて数日目、洗濯物を作業部屋に干しながら
雨が降り続く場面があるお話を思いだしておりました。
※お話のネタバレを致します。

ひとつはガルシア・マルケス著「百年の孤独」です。
このお話の中に、雨が４年11カ月2日降り続く場面があるのです。
読んだのは随分と昔のことで、内容はほぼ忘れましたが(一応調べました)
雨が降り続く場面だけは深く残っています。
正直なところ読みやすい本ではありませんが、ハマると没頭する物語です。

そしてもうひとつ思い出していたお話は、トーベ・ヤンソンが書いた
「しずかなのが好きなヘムレンさん」です。
『ムーミン谷の仲間たち』というほのぼの感のあるタイトルの本に入っています。
この本は、タイトルのほのぼの感からは想像もつかない、深い哲学的な内容です。
中学生の時に教室でこれを読んでいたら、級友が「そんなの読まないでよ~」と
わらっていましたが、中身を知ったら驚いただろうと思います。
「しずかなのが好きなヘムレンさん」は、陽気で賑やかな性質のヘムル族ながら
”静かなのが好き”という変わり種のヘムレンさんが主人公です。

この設定だけで、ヘムレンさんが生きにくかった事は想像できるでしょう。
年金がもらえる日を夢見て、やりたくもない仕事(遊園地の切符もぎり)を
「やめたい」と言えずに延々と続けたヘムレンさん。
その日々が、降り続く雨によってリセットされます。
遊園地は雨で流されて、ヘムレンさんの仕事は無くなります。
そしてヘムレンさんは、やっと「年金が欲しい」と言えます。
長年持っていた夢をヘムル族に話して、笑われ、夢は消えてしまいます。

年金と大きな家を貰って、ひとりの自由な暮らしを手に入れたヘムレンさん。
夜の森をひとりで楽しむ挿絵は圧巻です。トーベ・ヤンソンは芸術家です。
独りの喜びを手に入れたヘムレンさんは、けれどもその後、
子どもたちが持ち込んだ遊園地の残骸を使って、自宅の森に
遊園地を再び作ることになります。

出来あがった遊園地は、ヘムレンさんが勤めていた遊園地とはまるで違います。
子どもたちも手伝って、ヘムレンさんが作った、ヘムレンさんの遊園地です。
大きな音を立てたり、大声で騒いだりしなければ、楽しく遊べるのです。
子どもたちが遊園地へと散って行って、ヘムレンさんは安心して眠ります。

ヘムレンさんが大切にしていた夢、ヘムルたちに笑われて消えてしまった夢は、
「自分でおもちゃの家をたてること」でした。
消えてしまった夢は、そのつもりもなく、いつの間にか叶ってしまったのです。
それも、ずっと大きく素敵になって。

こういう事が、生きていると起きるのですよねと、
トーベ・ヤンソンが、にっこり笑いながら教えてくれているようです。
雨が降り続いても、大丈夫です。

どなたさまも、よき夜を、よき一週間を。

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